大健闘してくれた世界大会におけるDFMについて
今回の記事は大健闘してくれたDFMについて書きたいと思います。
まず今シーズンの春と夏の違いを挙げていきたいと思います。
・コーチがKazuに変わった
・コーチが変わったことにより以前よりアグレッシブなプレイスタイルを取るようになった
・一つのレーンだけでなく様々なレーンからゲームメイクできる構成、序盤偏重型、終盤集団戦型などシーズンを通してあくまで一位通過を目指しつつ試行錯誤を怠らなかった
一番大きい変化はやはりコーチが変わってからのプレイスタイルの変化についてだと思います。
日本の過去の世界大会を見てみるとアグレッシブに仕掛けることが少なく相手のミスを待ってワンチャンスにかける、ということを試合が始まった瞬間から見て取れる消極的なピック、試合展開を見せていたことです。
以前韓国の解説者から非常に酷評されたことがありましたが、その際に「日本は守ることが好きだが守ることに長けているわけではない」とまで言われてしまいました。
なので大舞台で4試合中最後の1試合、敗退が決まった状態でアグレッシブに動けて1勝だけもぎとるということが何回もありました。
それがDFMの今夏シーズンの試合を見てみると相手のミスを待つではなく「相手のミスを誘発し仕掛ける」「デスをしてもオブジェクトを取っていく姿勢」が垣間見えたことです。
それが良い結果でも悪い結果でも経験値となったのだと思います。
前置きが長くなってしまいましたがでは早速DFMがWCSで行った2試合分、あまり詳しくは書けませんが解説と私の所感を書いていきたいと思います。
Game1 KBM戦
KBMはブラジル地域特有の超アグレッシブスタイルを売りとするチームです。
マクロで勝負というよりも個々のミクロが非常に長けていて各レーンソロキルできるポテンシャルがあるチームです。
特にMidのdyNquedo選手とAdcのTitan選手の二人が華のある選手です。
BAN/PICK
KBM
サイオン
タリヤ
シンドラ
トリスターナ
スレッシュ
DFM
オーン
キンドレッド
カルマ
ヴァルス
タムケンチ
バンピックを見ると狙いはお互いはっきりした構成です。
KBMとしては序盤から圧力をかけることができるタリヤ、シンドラを活かしてマップコントロールをしてキンドレッドのスタック管理をスローにし、後半は育ったトリスターナでキャリーする。
DFMとしてはオーン、ヴァルスとエンゲージできるチャンプがピックできた、キンドレッドのUltとタムケンチをピックできたのでキンドレッドとヴァルスを集団戦時に倒されないように守ることができるので、試合序盤は耐えて後半の集団戦でダメージ勝ちしていく構成。
更に言えばヴァルス、キンドレッドどちらかがこけたとしてもどちらかにゴールドを集めることによりダメージが出せなくなるという状況を作らないように保険もかけています。
バンピックのみだけで見るとこれはKBMサイドに分があったと私は見ています。
というのもレーンが全て負けてしまうピックであるにも関わらず相手のJg内に入っていかなければならないキンドレッドをなぜ早めにピックしてしまったのかということ。
今回ブルーサイドだった為どこかレーン一つはカウンターを取られてしまうためTopレーンを隠したことはわかります。
ではなぜチームとしてシンドラを出された際の回答がカルマだったのか。
チームでカルマをもしピックするということであればもっと早めにカルマを出してもよかったのではないだろうか(SupでもMidでもいけるフレックスな為)。
タムケンチをピックするのであればBotレーンは必然的に押し込まれてしまう為、Midは押し込ませないピックをするべきだったと私は思います。
最適解を挙げろと言われると答えに困ってしまう部分ではありますがもしキンドレッドをJgに置くと想定するならCeros選手がドミネートできる力を持っているのであればエコー、レーン戦のプッシュ能力勝ちを狙うのであればヴェルコズやアニビアなどもいいかと思います。
もしJgがキンドレッドでなければ例えば序盤から有利の取れるシンジャオやオラフ、ガンク能力の高いエリスなども候補に挙がるかと思います。
なぜキンドレッドを取ったか真意は不明ですがSteal選手のゲームメイク能力であれば多少有利を取られても取り返せると踏んだのかもしれません。
試合展開
最序盤から嫌な展開。
タリヤが青バフをスティールするとその後もサイオン、シンドラでレーンを押し上げスカトルコントロールを完璧に行います。
マークが一つも取れない状況で暗雲立ち込めるといった感じです。
流れを変えたのはやはりチームの要のEvi選手から。
オーンでキャッチされたかと思いきや逃げ切り味方の援護が来る時間を稼いでベイトの形で仕掛けることができました。
ただその後Botアウタータワー、ヘラルドも取られてしまい一時的ではありますがオブジェクト有利を取られてしまいます。
そのままずるずる行くかと思いきやそこはブラジルのアグレッシブプレイヤーTitan選手。
トリスターナのロケットジャンプ(W)で視界のないところにブリンクインをしてきたのだ。
そこを逃すはずがなく1キル、シャットダウンゴールドがYutapon選手に入りました。
Yutapon選手の使うヴァルスはトリスターナよりもパワースパイクが早いためこのシャットダウンゴールドが入ったことにより王剣に続きグインソーレイジブレードが完成した。
これにより集団戦ができる時間を早めることができたのがこのゲームの肝になったと思います。
その後もこのグインソーの完成のおかげか2キルYutapon選手に入り、バロン前での集団戦となった。
正直に申し上げるとこのバロン前での集団戦はかなり運がDFMサイドに向いたと思います。
1つ目はYutapon選手に奇跡的にキルとゴールドが集まっており26分で2000G負けている状況にも関わらず集団戦ができる装備が整っていたこと。
2つ目はSteal選手が執行猶予(R)をバロンピット内で使いましたがバロンにかからなかったこと。
これに関してEyesさんとRevolさんはわざとずらしたと言っていましたが私は見ていてそんな一瞬であの混戦の中狙ってできるものではないかと思います。
そして3つ目はYutapon選手のQでバロンスティールをすることができたこと。
これに関してもYutapon選手はバロンをスティールするつもりなくただ単純に「バロンを取られた後の集団戦でダメージを出すため」にQを使ったのだと思います。
このバロン前での集団戦のみを見れば運が非常に強かったと思います。
ただ序盤完全にSteal選手が腐らされてしまった状況だったにも関わらず辛抱強く粘ることができ、Yutapon選手にゴールドを集めることができた。
これこそが「WCSで戦うためにシーズンを通して試行錯誤し準備した経験値」だったと私は思います。
Game2 C9戦
C9は昔からある名門チームです。
MidのJensen選手、AdcのSneaky選手はとても有名な選手ですね。
そんな中TopのLicorise選手、JgのBlaber選手、SupのZeyzal選手と新人の選手が多いのも特徴のチームでもあります。
BAN/PICK
DFM
アーゴット
シンジャオ
ジグス
ヴァルス
タムケンチ
C9
リサンドラ
キンドレッド
イレリア
カイサ
この試合のDFMのバンピックは非常に上手くいったと言えると思います。
まずは今大会OPチャンプの一角にあたるアーゴットをEvi選手が取ることができたこと。
Licorise選手は非常にミクロに長けた選手ですのでアーゴットという序盤から圧力をかけることができるチャンプをEvi選手に渡すことができたのはそれだけでアドバンテージだと言えます。
2つ目にviviD選手が1試合目でパフォーマンスが良かったタムケンチをピック出来たこと。
これに関しても相手が嫌がることを優先するよりも「自分たちが得意なやりたいことをする為のピック」をすることができたのは大きいと思います。
今パッチでタムケンチは非常に手痛いナーフを受けました。
体力数値の大幅減少で序盤のレーニングの段階で有利を取られやすいということです。
ではなぜタムケンチを優先して取るのか。
いくつか候補は考えられます。
ヴァルスというブリンクのないチャンプを守るのに非常に長けている、というのはもちろんですがヴァルスとタムケンチを組み合わせることで船旅(R)と穢れの連鎖(R)で強引にエンゲージも可能だということです。
レーニングで非常に安定したパフォーマンスを見せることができるDFMのBotレーンコンビだからこそできるピックだと私は思います。
そして3つ目にJgに序盤から圧力の欠けることができるシンジャオをピックしたこと。
今回DFMサイドはJgのピックをピックフェーズ2まで隠しました。
この狙いとしてはJgからテンポを握りそのままレーンに供給したいという狙いからだと思います。
今シンジャオに対するカウンターと呼べるJgは構成上ピックしづらい傾向にあります(ジャックスなど)。
今回C9サイドはキンドレッドという中盤のスケーリングは素晴らしいですが序盤はカウンターJgをしなければならない、かつガンクもあまり強くないピックです。
シンジャオであればタイマン負けることはないですしガンク性能も高く序盤からプレッシャーを容易にかけることができるからです。
C9サイドとしてはMidのJensen選手のイレリアでジグスをドミネートしようとしている構成です。
Botレーンもガンクのセットアップが得意な組み合わせですがタムケンチをDFMサイドがピックしているので刺さりづらいことからみてもMidを中心に組み立てようとしているように思えます。
試合展開
序盤はやはりシンジャオが積極的に圧力をかけれる展開。
小規模戦においてはDFMの構成はあまりエンゲージに長けたチャンプはいませんが今回Steal選手が使うシンジャオがエンゲージツールとしてとても機能していました。
更にはアーゴットのデスグラインダー(R)がキンドレッドの執行猶予(R)に対してカウンターとして機能していたことも大きいでしょう。
レーン戦では世界中の誰もが驚いたのがCeros選手のジグスでしょう。
イレリアは距離を詰めることが非常に容易でトリニティフォースを積んだ後はほとんどアサシンに近い動きができるチャンプです。
ジグスは距離を詰められると非常に弱いチャンプなのでマッチアップ的にはかなり不利なはずなのですが互角に戦えていたことです。
これによって序盤からのスノーボールというものを防ぎ、かつガンクを呼び込みキルにまで繋げるという展開に持っていきました。
バロンを取り、インヒビターを2つ破壊し、序盤中盤完全に試合のテンポはDFMサイドにあったと言えるでしょう。
雲行きが怪しくなったのは試合時間29分40秒の集団戦。
ジグスは狭い範囲での集団戦が強いのですがキンドレッドの執行猶予がここで刺さりました。
更にはTopリサンドラという奇抜なピックで何をするのかと試合前は思っておりましたがアフターショックをつけたリサンドラはかなり硬く更にダメージも出せるという新メタを感じるピックとなったのがこの試合でわかりました。
試合最終盤C9は完全にコミュニケーションエラーでエルダードラゴンに行くのかバロンに行くのかという判断が完全に分断され結果エルダードラゴンのバフ、バロンのバフ共にDFMサイドが獲得するという形になった。
そして最後の集団戦はDFMのボイスチャットを後から聞いてみると裏からLicorice選手が来ていたことはわかっていたようでした。
エルダーのバフ、バロンのバフ共に持っているので集団戦をしてゲームをここで畳みたいという焦りが出たのかもしれません。
結果DFMサイドの負けという結果にはなってしまいましたがこの試合は私はもちろんのこと世界でこのゲームを見ていた人はこう思ったでしょう。
「なんて熱い試合だったんだ」と。
私はその日の夜なかなか寝つくことができず次の日にも支障が出たほどに燃え尽きた感じがしました。
この試合を通して世界での日本の株も上がり、またLJLにも腕の立つ韓国人選手が出てくるかもしれません。
本当はDFM戦全8試合考察したかったのですが私の時間がなかったので初日の2試合のみピックアップさせていただきました。
このWCSは日本のlol界においてとても意味のあるものになったのは間違いがありません。
今後のLJLの発展を祈って、また来シーズンの春とても楽しみに待ちたいと思います。